知能行動情報学研究室の机にはデスクトップコンピュータが置かれていません。その代わりに、クラウド環境に計算機環境を構築し、ブラウザから機械学習ができる環境を用意しています。
AIの開発にはGPUが必要不可欠
深層学習モデルに代表されるAIの開発では、GPU(グラフィックス処理ユニット)の役割が重要になります。これは、主にGPUが大量の並列処理能力を有しているからです。ディープラーニングやニューラルネットワークの訓練では、大量の行列演算が同時に行われます。このとき、数千もの小さなコアを持つGPUは、これらの大量の演算を効率的に並列処理し、高速化することが可能です。
また、ディープラーニングのワークロードは非常にデータ集約型であり、大量の訓練データを頻繁にGPUとメインメモリ間で移動させる必要があります。これに対応するため、多くの最新のGPUは高速なメモリインターフェースを有しており、大量のデータ転送を迅速に実行できます。
このような理由から、AIの開発においてGPUは不可欠なツールとなっています。行列演算の並列処理能力、高速なデータ転送、専用のAI処理機能など、その機能性がAIの学習と効率化に大いに貢献しています。
研究室の計算機環境はクラウドに
クラウド環境でGPU付き計算機環境を構築し運用することは、深層学習を用いる研究プロジェクトに多くの利点を提供します。
その主な利点は、スケーラビリティが極めて高いことです。クラウド環境では必要に応じて計算リソースを容易に増減させることができるため、大規模な学習タスクを実行したり、複数のタスクを同時に行うなどの状況で、追加のGPUリソースをすぐに確保できます。
また、コスト効率も大きなメリットです。GPUは高価であり、適切なメンテナンスも必要とされますが、クラウドベースのGPUリソースを利用することでそのコストは大幅に削減可能です。ハードウェアの調達、設置、運用、メンテナンスにかかる費用や手間を気にする必要がありません。
さらに、クラウドプロバイダーは最新のGPUテクノロジーへのアクセスを提供します。自己所有のハードウェアでは、ハードウェアのアップグレードに追加的な投資が必要ですが、クラウド環境では常に最新の技術を利用することができます。
さらに、ハードウェアの設定やメンテナンスに費やす時間を、AIモデルの訓練や改善に集中できます。クラウドプロバイダーがハードウェアの運用とメンテナンスを担当するため、開発者がコア業務に専念できます。
最後に、クラウドサービスは地理的な制約がなく、インターネット接続があればどこからでもアクセス可能です。これにより、どこからでも研究を行うことができます。
以上のような理由から、知能行動情報学研究室ではクラウドに計算機環境を作っています。これらの環境は、これから研究だけでなく企業のインフラ整備においても重要視されてくると考えられます。もし、そのような技術や知識を身に付けたい方は研究室のAdminチームに加わってみましょう。
IBILab 計算機環境
知能行動情報学研究室のクラウド計算機環境は、Jupyter Notebookをベースとして構築されています。
Jupyter Notebook(あるいは単にJupyter)とJupyterLabは、データ分析や機械学習、科学計算などのコーディング作業を効率的に進めるための開発環境(IDE)です。これらのツールは、コード、視覚化、マークダウンテキストなどを一つの文書に統合できる点で特に強力で、研究者やデータサイエンティストにとって非常に便利なツールとなっています。
Jupyter Notebookは、ウェブブラウザ上で動作するインタラクティブなコーディング環境です。Pythonをはじめとするさまざまなプログラミング言語に対応しており、コードの記述と実行、結果の表示を同じ画面で行うことができます。また、マークダウン記法によるメモや説明文を挿入することで、コードの解説や分析結果の報告書を作成することも容易です。
一方、 JupyterLab はJupyter Notebookの次世代版とも言えるもので、より強力な機能と柔軟性を提供します。JupyterLabは複数のノートブック、テキストエディタ、ターミナルなどを同時に開くことができ、これらをタブや分割画面として自由に配置することが可能です。これにより、複数の作業を同時に管理したり、コードの実行結果を別のタブで直接視覚化するなど、より効率的に作業を進めることができます。
これらのツールはオープンソースで提供されており、世界中のコミュニティによる開発と改善が行われています。そのため、機能面や安定性、対応するプログラミング言語の種類など、広範かつ高度なニーズに対応することができます。
計算機環境概要
研究室の計算機環境は、ユーザ管理ができるJupyterlabで構成されています。指定のURLにアクセスすると以下のように計算機サーバをどのようなCPU・メモリ・GPUの構成で立ち上げるかを選択する画面になります。
ここで一つの環境を選択してスタートすると、クラウド環境に仮想マシンが構築されて、
最終的に以下の画面になります。
Pythonの他にRによる統計解析やJuliaなども使えるようになっています。